南海トラフ巨大地震 発生時期の予測 (2030年代)
東日本大震災の10倍を大きく超える被害が想定されている、南海トラフ巨大地震。
この南海トラフ巨大地震は、過去、およそ100年ごと(90年から150年)の周期で繰り返し発生しており、これまで一度も発生しなかったことがないんですね。そのため、いつかまた、必ず発生するものと考えられているんです。
京都大学名誉教授で地球科学者でもある鎌田浩毅先生は、『パスはない』と仰っていました。
その地震の発生確率は、今後30年以内に「60%〜90%程度」と見直され、新たな発表が行われました(2025年9月 政府の地震調査委員会)。
この見直しは、南海トラフの状況が変化したことによるものではなく、【時間予測モデル】から【すべり量依存BPTモデル】へと計算方法が見直されたことと、過去の史料の解釈の見直しによるものなんですね。
今後30年以内の発生確率(%)ではなく、発生時期(年)という具体的な説明に焦点を当てた場合、2035年を中心として、前後プラスマイナス5年の間(2030年〜2040年)に発生する可能性が高いといった見解があるとのことです(この見解は主に【時間予測モデル】に基づいているんです)。
南海トラフ巨大地震の発生時期は、90年から150年の間でランダムに発生しているわけではなく、ある一定の法則があるんですね。具体的には、地震発生時の地面の隆起量と、次回の地震発生時期との間に相関関係が見られるのです。隆起量が多かった場合(規模が大きい地震)は、次回の地震までの期間が長くなる一方で、隆起量が少なかった場合(規模が小さい地震)は、次回の地震までの期間が短くなるという傾向があります。この法則によって、次回の発生時期を大まかに予測することが可能になるというわけなんです。
お話が長くなりすぎるため、いくつかの要素を省き、大まかに説明させてくださいね。
【時間予測モデル】は、地震の発生間隔が前の地震の規模に比例するという前提に基づいて構築されています。一方、【すべり量依存BPTモデル】も、同様に発生間隔が前の地震の規模に比例するという考え方を採用しつつも、ばらつき(変動)をも考慮に入れているんです。したがって、この2つのモデルの主な違いは、ばらつきを考慮しているかどうかという点にあります。
この【すべり量依存BPTモデル】は、ばらつき(変動)をも考慮に入れているため、「60%〜90%程度」と幅のある確率となっているのです。幅が生じる理由は他にもありますが、すべてを詳細に説明すると、記事が長くなりすぎてしまい、読者の方々を疲れさせてしまう可能性があるため、ここでは割愛いたしますね。
今後、【すべり量依存BPTモデル】を用いて時期の予測が行われた場合、現在示されている『2035年を中心として、前後プラスマイナス5年の間(2030年〜2040年)に発生する可能性が高い』という学術的な見解に変化が生じるのかどうかについて、いずれ再度確認をしたいと考えております。
また、補足的な情報となりますが、2050年までには確実に発生すると、ほぼ全ての学者が考えているようです。
南海トラフ巨大地震 被害の規模
南海トラフ巨大地震は、東日本大震災と比較して震源が陸地に近いため、津波の到達時間が短縮されるとともに、津波の高さも増大することから、多方面で甚大な被害が想定されています。
また、東日本大震災では、震度7を観測したのは1か所だけでしたが、南海トラフ巨大地震においては、震度7の揺れが想定されている市町村の数は、149にも上るとされています。
これらのことから、想定されている被害規模は、東日本大震災のそれを遥かに上回り、10倍を超えると見られています。
東日本大震災における死者数は、約2万人でした。
一方、南海トラフ巨大地震で最大として想定されている死者数は、29万8千人です(以前は32万3千人と想定されていました)。
想定されている死者数は、東日本大震災の約15倍にあたります。
これほど多数の被害が想定されてしまうのは、被害想定の範囲が東京から九州までと広範囲に及んでしまっているうえに、人口密度の高い都市部で甚大な被害が発生してしまう可能性があるためです。
しかも、被災者の人数が極めて多いことから、救援物資の不足という問題は、東日本大震災の時以上に深刻化してしまうことが懸念されます。東日本大震災の際も、救援物資の不足は極めて深刻な状況でしたが、それを上回るとなると、言葉を失うほど恐ろしい事態ですね。
中国地方でも震度5程度の揺れが想定されているため、被災を免れる地域は、沖縄・東北地方・北海道などに、ほぼ限定されます。結果として、これらの限られた地域から救助や救援物資が投入されることとなります。
しかし、これらの地域には、人口密度が高くない地域が一部含まれることから、効率の面でも人数の面でも、十分な対応が追いつかず、発災から1週間、あるいは1ヶ月経過しても救援物資が届かないという状況も十分にあり得ると見られています。
また、沖縄・東北地方・北海道などは、南海トラフ巨大地震による甚大な被害を逃れることができたとしても、直下型地震や他の海溝型地震による被害を受けてしまっている可能性もあります。これにより、支援が期待できないばかりか、お互いに苦しい状況に陥ってしまっている可能性もあるでしょう。
こうした状況を踏まえ、可能であれば、1ヶ月分の備蓄を心掛けることを、お勧めいたします。
経済被害の規模を比較してみます。
東日本大震災による被害額が、約20兆円であったのに対し、南海トラフ巨大地震は、約292兆3千億円という被害額が想定されています(以前は220兆3千億円と想定されていました。)。また、学者によっては、400兆円、あるいは500兆円と想定する見解もあるとのことです。
この約292兆3千億円という金額は、国家の一年間の税収の約3~4倍の規模に相当します。
南海トラフ巨大地震の想定被害額は、東日本大震災の被害額の約15倍に相当する規模なんですね。
さらに、インフラが20年間にわたって機能停止するなど、それに伴って発生する様々な問題も含めた被害総額は、約1466兆円に達するという試算も存在します(2025年6月 土木学会)。
想像を絶する規模ですよね。
想定される被害額が多額になってしまう大きな要因としては、震源が陸地に近いことで広範囲に及んでしまっているうえに、日本の産業・経済の中心部で甚大な被害が発生してしまうことも挙げられます。
これほど多額の被害額が想定されている場合、国の復興支援も追いつかず、十分な支援を期待できない可能性も考慮に入れておく必要があると、個人的には思っています。
想定される被害額が国の年間税収の約3~4倍であるという事実に加え、発災後は、経済活動の停滞により、税収が大きく減少する可能性があります。
この複合的な財政問題に対し、国がどのように課題を認識し、どのように対処していくのか、現時点では、不明な点が多すぎるのです。
東日本大震災では、津波の高さが15mから20m弱程度であり、津波の到達時間には約1時間ほどであったため、一部の方々には避難する時間がありました。
一方、南海トラフ巨大地震においては、津波の高さが最大で30mを超える地域があり、さらに津波の到達時間がわずか数分の地域もあると想定されています。
この到達時間の短さは、極めて深刻な課題です。
内閣府が公開している【南海トラフ巨大地震編 シミュレーション編】という動画では、以下のような津波の予測が示されています。
| 地域 | 津波到達時間【最短】 | 津波高【最大】 |
|---|---|---|
| 和歌山県 | 2分 | 20m |
| 三重県 | 4分 | 27m |
| 高知県 | 3分 | 34m |
| 大阪府 | 59分 | 5m |
| 静岡県 | 2分 | 33m |
| 宮崎県 | 16分 | 17m |
この表にある津波が到達する時間の【最短】とは、大地震発生後、海面水位が1m上昇した津波が到達するまでの時間を指しています。そのため、津波到達時間が【最短】となる場所と、津波高が【最大】となる場所は、必ずしも一致しないという点に、ご留意ください。
しかしながら、わずか数分で、30mを超える高さまで避難をする必要がある地域が存在することに変わりはありません。
これほど短時間で高所への移動は、現実的に可能なのでしょうか?
もし移住が可能な状況にある方は、命と安全を守るために、引っ越しをご検討いただくことを、お勧めいたします。
ただし、いくつか注意点があります。
東日本大震災では、津波が河川を遡上(そじょう)し、海から約50kmも離れた内陸まで到達した記録があります(北上川)。
南海トラフ巨大地震の場合、その例以上に海から遠く離れていても、大きな河川の近くにお住まいの場合には、危険が及ぶ可能性があります。
また、湾の奥深くやV字型の谷状の地形では、津波のエネルギーが集中し、浸水範囲が拡大化する可能性があります。もちろん、低い土地でも浸水リスクが高まります。重要なのは、距離よりも標高(高さ)のほうなんですね。
そのため、『海から遠いから大丈夫』と油断をせず、お住まいの地域の津波ハザードマップを、参考までに必ず確認することを、お勧めいたします。
さらに、津波の高さが1mであっても、死亡する確率はほぼ100%とされているため、想定されている津波高が低めであったとしても、決して油断をしないよう、十分にご注意いただきたいと願っております。
もう一つ、非常に重要な問題が潜んでいます。
それは、津波の到達時間や高さが、想定されたものよりも早まったり、高くなったりしてしまう可能性があることです。
そのような現象が発生してしまう原因については、ぜひ以下の動画をご覧くださいね。
京都大学名誉教授であり地球科学者でもある鎌田浩毅先生のご見解から、南海トラフ巨大地震のような海溝型地震の発生前には、内陸で直下型地震が増える傾向があること、また、南海トラフ巨大地震の発生後には富士山が噴火しやすくなることなど、複合的なリスクについても知ることができました。
これらの複合的な災害に対しても、私たちは、しっかりと備えと対策を講じる必要がありますよね。
以下の動画は、鎌田浩毅先生による大変示唆に富むお話です。今回のテーマに関する新たな知見も得られるかと思いますので、もしよろしければ、ご覧ください。
以上で本記事の情報提供を終了します。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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