火災の発生を防ぐ方法や 消火に関連する注意点については、別の記事で詳しくお伝えしますね。
本記事で扱うのは、火災による死因の一つである「煙に含まれる有毒ガス」の深刻な現実についてです。
炎が回り込むよりも早く、短時間で命を脅かす、この目に見えない脅威から、いかにして生き延びるのか。そのための具体的な対策を整理しました。
多くの方は、火災での死者=焼け死んだというイメージを持っていますが、それでは火災による被害の実態を正確に捉えることができていません。
実際には、火災で命を落とされる方の多くは、「火傷」と「煙に含まれる有毒ガス(一酸化炭素)」によって亡くなっているのです。「煙に含まれる有毒ガス」は体内の酸素の運搬を阻害し、意識障害や呼吸停止、心停止などを引き起こします。消防庁の公式統計(令和6年版消防白書)では、建物火災における死因が「一酸化炭素中毒・窒息」であるものは 36.5%とされていますが、死因が「火傷」とされている方のなかにも、実際には一酸化炭素中毒によって意識を失った後、もしくは、意識はあっても動けなくなってしまった後で、炎に巻き込まれて亡くなってしまったケースが数多く含まれているのだそうです。このような間接的な影響も含めると、有毒ガスが死亡の原因となっている方は、火災による死者の「およそ8割」に及ぶのだとする専門家の方々の見解も存在しています。炎が回るよりも遥かに早く、発火から わずか数分程度で、命を奪うほどの高濃度の有毒ガスが充満してしまうことが多いのですね。煙を吸ってしまった方のなかには、わずか一呼吸だけで意識を失ってしまう方もいます。一呼吸だけで意識を失わなかったとしても、身体が動かなくなってしまったり、思考が混濁して出口を見つけられなくなってしまったりすることによって、避難ができず、死を迎えることになってしまう方もいるのです。
残酷な現実を言えば、炎に焼かれる前に、すでに呼吸という生存機能が停止しており、その後に焼かれることになってしまうのですね。
震災時など大規模災害下で生じた火災の場合、建物のヒビ割れなどを通じて煙が回る速度は さらに上がり、倒壊物などの障害によって避難は遅れます。
こういった環境の悪化が重なり合う震災時においては、この目に見えない暗殺者である「有毒ガス」の脅威は、一般的な火災以上に増大する可能性があるのだと、そう考えるべきなのではないでしょうか。
ですから、煙を吸い込まないための対策は、生存のための絶対的な条件なのですが……。
しかし、不可解なことに、多くの防災の専門家の方々が、物理的に極めてリスクの高い手法を推奨しています。それは『火災時は防煙フード(あるいはゴミ用のポリ袋)を被って逃げろ』という指導なんですね。
そうした指導内容が、十分な検証も なされないままに広まってしまっている、この世の中の構造に対して、私は拭い去れない危惧を抱いています。
私が抱いている この危惧は、個人の感情的な疑念なのではありません。
有志の方による【防煙フード】の多角的な実証テストは、その構造的な欠陥を明確に示しているのです。もちろん、あらゆる状況を一括りにはできませんが、実証テストで示された結果は、私が かねてより懸念していたリスクが、やはり無視できない現実なのだということを裏付けているのです。
【防煙フード】が何なのか分からない方は、この下のボタンをクリックしてくださいね。【防煙フード】の画像が表示されますので……。
火災時の火の粉の飛距離は 50m〜200m位
まれに2km以上も遠くまで飛ぶこともある
なぜ熱に弱い素材の火災用製品を販売しちゃったの?
市販されている【防煙フード】の多くには、驚くべきことに『耐火性がない』や『耐熱性がない』などの説明書きが添えられています。素材は製品によって異なりますが、熱で容易に溶けてしまうものが大半なんですね。
私は以前から、遠くから飛来する火の粉によって【防煙フード】が溶け、顔面に貼り付いてしまう二次被害について、強く危惧しておりました。
高温化した衣類が皮膚に貼り付いてしまった場合、火傷は重症化してしまいます。
一般的に、火傷は、火に一瞬 触れた場合よりも、熱湯や高温の油を被ってしまった場合の方が重症化しやすいと言われています。人間は熱さを感じれば反射的に身体を遠ざけますが、衣類に染み込んでしまった熱湯や高温の油は、衣類を脱ぐまでの間、絶え間なく皮膚に熱を与え続け、遠ざけることができないのです。このように時間が長引いてしまうことによって、重症化してしまうのですね。
熱によって溶ける素材の【防煙フード】が顔に貼り付いてしまった場合、これと同じか、あるいは、それ以上に過酷な現象が生じてしまう可能性があるでしょう。
通常の衣服であれば(一部の化学繊維を除く)溶けて肌に固着することは ありません。しかし、熱で溶けたビニール状の物質が顔に張り付いてしまった場合、皮膚の組織と一体化が起きて、剥がすことすらままならず、皮膚は深部まで熱せられ続けることになってしまう可能性が高いのです。
以下の実例は【防煙フード】そのもののデータではありませんが、応用して置き換えて考えてみてくださいね。
実際、天然繊維100%の衣類ならば焦げるだけで済んだはずの部位において、化繊が溶けて皮膚に張り付いて一体化し、絶え間なく熱が深部へと伝わり続けた結果(内部に熱を保持して冷えにくい)、筋肉や骨にまで達するほどの重篤な火傷を負ってしまったり、化繊と一緒に皮膚が剥がれ落ちるほどの深い損傷を負ってしまったりと、多種多様な症例が存在するのです。
そのため、火花が激しく飛び散る溶接現場などでは、化繊の作業服を着用しないことが、一個人の判断を超えた厳格な安全基準として定着しているほどなんですね。
防災の専門家の方々には悪気はなかったことでしょう。
ですが、火災から命を守るための道具だったはずのものが、一転して「脱げない高熱の拷問器具」へと変貌してしまうリスクを、今後、直視していただけたなら、私としても嬉しく思うのです。
呼気に含まれる二酸化炭素だって、
二酸化炭素の濃度を高めてしまう環境ですよね
そもそも、火の粉で穴が空けば、防ごうとしていた一酸化炭素などの有毒ガスは、容赦なく侵入してきます。
しかし、仮に穴が空かなかったとしても、別の致命的な問題が浮上してきてしまうでしょう。それは、自分自身が吐き出す二酸化炭素の問題のことなんですね。
製品の説明欄には『2〜3分呼吸ができる』との記載があります。しかし、震災時の極限状態において、わずか数分で安全圏へ脱出できる保証など、どこにもないのです。
それ以上に注視すべきは、その数分間の質についてです。
そもそも、この2〜3分という時間的条件は、静止状態に近い穏やかな呼吸といった状態下においての二酸化炭素の排気量と、袋の容積に基づかれた計算上の数値に過ぎないのです。
現実はどうでしょうか。避難時の疾走や極度の緊張状態によって、私たちの呼気からは普段よりも大量の二酸化炭素が排出されます。その結果、【防煙フード】内の二酸化炭素の濃度は、想定を超える何倍もの速度で急上昇していき、呼吸困難や吐き気、頭痛、めまいなどを引き起こさせる引き金となってしまう可能性があるのです。
また、滅多にないこととはいえ、症状が重まれば、見当識(自分の置かれた状況を正しく把握する能力)の失調や、意識喪失を招く危険性すら孕んでいます。
自分自身を救うために被ったはずのフードが、実は意識を混濁させ、逃げ遅れを決定づける「酸欠・高二酸化炭素環境」を自ら作り出してしまう可能性だってあるのですね。
たしかに、一酸化炭素と比較すれば、二酸化炭素が人体に害を及ぼす濃度は高めであるため、意識されづらいのかもしれません。ですが、【防煙フード】のように容積が極めて小さい密閉空間では、自らの呼気によって短時間で危険レベルに達してしまうのです。
煙に含まれる一酸化炭素ばかりに意識を奪われ、自らの呼気が生み出す二酸化炭素のリスクを無視するのは、生存戦略として十分とは言えません。一酸化炭素は血液中の酸素の運搬を阻害してしまいますが、それとは異なる別の原理によって、「二酸化炭素もまた、濃度次第では呼吸中枢を抑制し、人を死に至らしめる有毒ガス」なのだという事実を決して忘れてはならないのです。
毎週凄い眠くなるって話題の講義があって、受講生がほぼ女子だったの。
— わらび (@Mse7Ys) June 16, 2024
「女だからって話が通じないとは思いたくないし、俺の話が面白くないはずない!きっとこれは二酸化炭素のせいだ」って計測器置いたら、教室内の二酸化炭素濃度が2000ppmって出て、叫びながら全部の窓開けた教授がいた笑 https://t.co/xPZF3IIqg7
本文中で例に挙げたような重篤な症状が仮に出なかったとしても、問題は生じます。
震災による火災の最中において、X(旧Twitter)の例のように、ただ眠くなってしまうという、それだけのことで、私たちの正しい判断力は根底から奪われてしまうからなんです。だからこそ、二酸化炭素のリスクは、決して軽く捉えるわけにはいかないんですね。
ちなみに、フードを被って数回〜十数回程度(数十秒)の激しい呼吸をしただけで、先ほどのXの例(2,000 ppm=0.2%)の5倍から10倍の濃さに達してしまう可能性があるのです。数分経ったら、どうなることでしょう。つまり、眠くなる程度では済まない可能性があるということなんですね。
防災の専門家の方々の発言って
普段の発言との間で矛盾が発生している
防災の専門家の方々が普段発信されている内容との間には、論理的な矛盾が存在しています。
『震災時は、行く手を塞ぐ瓦礫などを退かしながら避難をするため、両手を空けておく必要がある。だからこそ、懐中電灯ではなく、ヘッドライトを選ぶべき』と、そう説かれる一方で、「手で押さえなければ使用できないタイプの防煙グッズ」も推奨されています。火災時は、理想の対策案を捨てて妥協案にするしかないと、そう判断されたのかもしれませんが、「両手を空ける」という原則と「手で保持する道具」の推奨は、実際の避難行動において物理的に矛盾する条件となります。
そのうえ、実際の避難現場は、割れたガラスや瓦礫などが山のように積み上がり、一歩ごとにバランスを崩し、踏み外してしまう可能性が高い過酷な空間です。そんななかで片手が塞がれてしまえば、転倒リスクを劇的に高めてしまうだけではなく、咄嗟の防御行動も困難になってしまうことでしょう。
試しに、ビニール袋を被り、外部の空気が入らないよう、それを手で しっかり固定し、そのうえで大きな物を退かすなどしてみてほしいのです。上手く動けないでしょう。
実際の震災時は足元が安定していないうえに、様々な方向から物が落下してくるため、さらに問題があると思われます。
また、小さなお子さんを背負ったり、必要な荷物を抱えたりしている被災者にとっては、手をフードの固定に割く余裕なんて物理的に存在しないはずなんです。
私が感じている違和感は、単なる道具の良し悪しについてではありません。泣き叫ぶ子供の手を引き(or おんぶ)、もう片方の手で荷物を抱えて、必死で瓦礫の中を逃げ回る親の姿が、その提言の中において、どれほど想像できていたのでしょうか、という点についてなのです。両手が塞がっているという生活者の状況への無関心そのものこそが、そこにはあったのではないでしょうか。
人それぞれ抱えている問題のタイプが異なるため、全ての人に適応できる完璧な解決策を提示するのは、ほぼ不可能です。ですから、そうした完璧な解決策を提示しろなどと無理難題を言う気はないのですが、タイプ別に他の解決案も同時に提示されていたのであれば、この問題に関する違和感は少なかったのかもしれませんね。
手を空けること、それは、単なる利便性ではなく、生存確率に直結する鉄則なはずなんです。防刃手袋で手の安全を確保し、両手で障害物を退けながら進むべき、その瞬間の対策に関して、どうして「手を使うグッズ」を選択肢に上げてしまったのでしょうか。「手を使うグッズ」には明確な限界が生じてしまうことでしょう。
ある有志の方の複数の実証テスト
私が抱く この物理的な違和感を、実際に目に見える形で検証してくださっている貴重なレポートがあります。【袋を被って火災避難??「防煙フード」の闇に迫る】という記事では、様々なテストによって暴かれた【防煙フード】の限界やリスクについて、テストの結果と共に詳しく説明してくださっているのですね。
この記事のテスト結果の極一部を引用しますが、その実態は驚くべきものです。
検証では接炎貫通試験を模して、ターボライターの炎を製品から15cmほどの距離に近づけた。簡易的なテストであるが、袋はみるみる内に溶けて穴が空いた。
直接火をつけたわけでもなく、15cmという距離があるにもかかわらず、あっけなく穴が空いてしまう……。これは悪い意味で凄いと言わざるを得ませんね。
実際の火災現場はライターなんて比較にならないほど大規模ですから、15cmより遠く離れていても、「熱放射(輻射熱)」によって一瞬にして損壊してしまう可能性が高いのだと、そう考えさせられてしまうのです。
さらに、この検証記事では「呼気などによる結露で、視界が著しく遮られてしまう」といった、私が気づけていなかった致命的な欠陥についても指摘されていました。気付けていなかった問題を知ることができて良かったと思います。
自分の息で中が真っ白に曇り、周囲が全く把握できない状況下で、瓦礫が積み上がる山のなかを、どうやって逃げきれと言うのでしょうか。
私が危惧している「熱への脆弱性」「二酸化炭素の蓄積」「手の不自由さ」といった問題に加えて、この「視界の喪失」など……その他も。これだけの物理的リスクが揃っているアイテムを、果たして、防災グッズと呼んでいいのでしょうか。
もしかしたら、【防煙フード】は、命を守るどころか、逆に生存を阻む障壁へと変貌してしまう可能性があります。私は、これを使うべきではないと、そう判断しているのですね。
問題はあるが、比較的マシな難燃性ポリ袋
【防煙フード】ではなく、一般的な製品よりも熱に強い【難燃性ポリ袋】であれば、まだ「マシ」な選択肢になり得るのかもしれませんけれど……。
もちろん、袋状である以上、結露による視界不良や 高二酸化炭素環境などの様々なリスクがありますし、「難燃性」とは あくまで燃え難い性質のことであって、「不燃性」のように燃えない性質というわけではありません。ですから、過信は禁物なのですが……。
それでも、熱で瞬時に溶け崩れるリスクのある【防煙フード】よりも、生存に寄与する可能性が高いはずなんですよね。これは、私たちが日常的に手にする普通のゴミ袋とは、物理的な設計思想が根本から異なる別の物なのだと、そう認識する必要があると思っています。
サバイバルマスク
(避難用 防煙アイシールド・マスク一体型)
このマスクは、N95呼吸装置としての規定をクリアしているらしいのです。この規格をパスしているということは、捕集性能は かなり高いはずなんですよね。煙に対してだけではなく、感染症にも効果を発揮するはずなんです。
というより、本来、【N95マスク】は、感染症や粉塵に対して、一般的なマスクよりも高い効果を持つものであって、一酸化炭素を遮断する目的の物ではないのです。
ですが、製品の説明欄によれば、煙に含まれている汚染物質の98.4~99.9%を除去できるという性能をラボ試験によって実証されており、煙の中であっても呼吸と視界を確保できるらしいのです。ということは、【N95マスク】としての捕集性能だけではなく、煙の中での生存に必要な特殊な性能も保持しているということなのでしょうね。
実際、世界的に有名な認定試験機関であるネルソンラボラトリーズの厳格な試験によって、火災やバイオハザードから生じる汚染物質に対する高い捕集性能が実証されているそうなんです。
ちょっとした補足なんですが……。
そもそも【N95マスク】というものは、顔とマスクの間の隙間をなくす密閉性が必須の条件なのです。ですから、本来は本人の顔の形やサイズに合うものを選ぶことが、使用上の大前提なはずなのですが……。それにも関わらず、この製品の説明欄には『サイズにかかわらず、どんな顔にも適応します』と記載されており、私は『そんな魔法のような話があるのだろうか?』と、ちょっとした疑問を抱いていました。
ところが、この疑問の答えは、10枚セット版の説明欄を読んだことで、一応のこと判明したのですね。1枚入り版の説明欄には詳しい解説がなかったため、答えに辿り着くまでは、私自身も物理的な矛盾に少しだけ困惑させられていたのです。
その種明かしは、「医療グレードの接着剤」にありました。マスクの縁をシールのように直接肌に貼り付けて密封する、という極めて物理的な仕様だったのです。これならば、顔の形やサイズを問わずに密閉が保たれるという理屈も通ります。
私と同じ疑問を抱く方は一定数いると思いますので、ぜひ1枚入りの説明欄にも、この重要な仕組みを明記してほしいものだと、そう思っています。
この製品の最大の利点は、避難時に「両手が自由になる」ことと、アイシールドに施された「曇り止めによって視界が確保される」可能性があることです。また、懸念していた二酸化炭素のリスクについても、袋状の【防煙フード】よりは、遥かに「マシ」な結果をもたらすはずなんです。
ここで、あえて「解決」ではなく「マシ」という言葉を選んだのには理由があります。
【N95マスク】は、濾過(ろか)能力が極めて高いがゆえに、空気の流れが わずかに制限されてしまうことがあるのです。そのため、多少 二酸化炭素の滞留が生じてしまい、息苦しくなってしまう可能性があるのですね。
とはいえ、袋状の【防煙フード】が抱える致命的な欠陥に比べれば、そのリスクは格段にマシだと言えるでしょう。
また、このマスクには【防煙フード】よりも熱に強い素材が選ばれています。不燃性ではないため、過信は禁物なのですが、熱で容易に溶けて肌に張り付いてしまう可能性が高い【防煙フード】の脆弱性に比べれば、はるかに「マシ」な選択肢だと言えるでしょう。素材の名称こそ似ていますが、その中身は全く別物なんですね。
ただし、あくまで「マシ」という領域を出ない可能性があるのだという認識は持っておくべきでしょう。小さな火の粉であれば、たとえ熱でマスクが溶けてしまったとしても、肌に固着するほど弱くはありませんが、過度に大きな火の粉が直撃してしまった場合には、おそらく固着する可能性もゼロというわけではないでしょう。
アイシールド(視界確保)部分は熱に強く、ほぼ問題ありませんが、もし、マスク部分の耐熱性に不安を覚えるのであれば、現実的な補強案として、難燃性のマスクで外側から覆うといった選択肢もあります。濡らした綿100%のマスクも補強として有効なのですが、いざという時の水分の確保や、呼吸のしづらさが壁になるため、運用には注意が必要なんですね。
さらに、バッグ等に忍ばせておける「携帯性」も、この製品の大きな強みです。地震は、いつ どこで発生するか分からないからです。どれほど高性能な機材であっても、その場になければ無意味で、準備していないのと同じです。仰々しい防毒マスクとは異なり、日常的に持ち歩けること、それ自体が、いざという時に煙から身を守れるかどうかの違いにつながるのかもしれませんね。
そして、忘れてはならないのが、心理的な側面です。震災時、極限のパニック状態にある小さな子供にとって、頭から袋を被せられるという体験は、さらなる恐怖を増幅させかねません。
この【サバイバルマスク(N95マスク)】の場合も、アイシールドなどによって抵抗感を感じさせてしまう可能性がないわけではありませんが、袋状ではないため、比較的、子供たちの抵抗感も「マシ」な結果になるのかもしれません。
ただし、残念ながら、この【サバイバルマスク(N95マスク)】は、12歳以上でなければ適合しないサイズ設計なのだそうです。この年齢制限の壁には、私自身も非常に頭を悩ませられております。
しかし、そうした課題を含んだ上でも、なお、物理的なリスクを総合的に判断すれば、【防煙フード】よりも、こちらのマスクの方が、断然「マシ」である可能性が高いと考えています。
持ち運び可能な小サイズの空気清浄機
この製品は、煙対策専用の空気清浄機ではなく、広い空間用の空気清浄機でもありません。ですから、決して過信をしないでいただきたいのですが、この製品は、数ある空気清浄機の中でも珍しく、説明の欄に「……、一酸化炭素などのガスを遮断し、……。」と記載されている とても希少な製品なのです。
そもそも、一酸化炭素の濃度を下げられる空気清浄機は 技術的な面でハードルが かなり高いため、市場には ほぼ存在しません。そのため、この製品を見つけ出すまでに かなりの時間がかかりました。探し出す時間がない方のために「一つの提案」として ここに記録しておきますね。
また、本製品の耐熱温度が50℃となっており、一般的な空気清浄機にはない耐熱設計が施されている点も良いところです。車内用であるため、夏の車内の極度な高温環境による故障の対策が施されているのだと、そう推測しています。
火災時の極度な高温環境下で使用できるわけではありませんが、火災の初期段階や、かなりの高温に至っていない50℃以下の環境下でなら、熱による故障を防げる可能性があるでしょう。
一般的な空気清浄機に耐熱設計がないことを考えれば、評価できるポイントなのではないでしょうか。
さらに、付属のシリコン製 滑り止めマットによって、機器を存在させる場所によっては ある程度 安定させられる可能性があるところも良い点かもしれません。完璧な固定手段とまでは言えませんが、滑り止めのない製品に比べれば、揺れ動きや滑り落ちを 極わずかでも抑えられる可能性はあるでしょう。
本来は車内用ですが、一応、持ち運べるサイズではあるため、先ほど紹介したマスクを補強するための「併用案」の一つとしても考えています。
マスクの性能は厳格な試験データによって裏付けられていますが、私は、試験環境と避難環境は全く別物であると、そう捉えているのですね。
震災時の避難は、瓦礫の山を乗り越えるなどの様々な理由で体を激しく動かす可能性があります。歯を食いしばるなどによって顔面の筋肉が動き、マスクの密着面に わずかな隙間が できる可能性があります。また、尖った瓦礫などによって マスクが破損する可能性も否定できません。
そうした際限なく何度も発生するであろう不測の事態を考慮するのであれば、メインの対策を少しでも補強できる「別の一手」を重ねて備えておくことは、ごく僅かであれ意義があることなのかもしれません。
ただし、本製品は密閉空間を前提としたものであり、移動中のような開けた空間では、清浄された空気が周りの流動的な空気と すぐに混ざり合って薄れてしまうため、清浄効果は大きく下がってしまうことでしょう。また、適応範囲(面積や容積)や処理スピードなど機能面には明確な限界があるため、一酸化炭素を完全に防ぎきれるわけではありません。そのうえ、携帯するには少し嵩張り、数百グラムの重量が増えてしまうことも事実です。こういった点は、避難時の機動性を考慮すれば明確なデメリットとなるでしょう。
ですが、マスクの隙間から侵入する有毒ガスや汚染物質を、ほんの少しでも減らせる極わずかな可能性に賭けるのであれば、選択肢のうちの一つとして、考慮してもいいのかもしれません。たった一呼吸だけで意識を失うこともある有毒ガスの脅威を前にしたとき、その重さは、命を繋ぎ止めるためのコストとして、重すぎるものなのでしょうか……。
子供用の防煙マスクについて……
先程ご紹介した【サバイバルマスク】ですが、すでに説明した通り、12歳未満の小さな子供には使用できないサイズ設計なんですね。そのため、私は必死で子供用の防煙マスクを他に探しました。しかし、どれだけ探しても、納得のいくものは一つも見つけられなかったんですね。
もちろん、仮に子供用の製品が存在したとしても、赤ちゃんや幼児がパニックの中で自らマスクを剥がし取ってしまうリスクは常にあるでしょう。
メーカー側にとって、そうした不安定な条件での製品化が難しいといった事情はあるのかもしれません。ですが、たとえ剥がし取られる可能性があったとしても、そういったリスクを承知の上で、それでも一縷の望みを託せるような製品を1種類くらい作ってくれてもいいのではないでしょうか。最初から選択肢が ほぼ存在しないに近い今の状況は、一体どういうことなのでしょうか?……と、疑問に思わずにはいられないのですね。
とはいいましても、結局のところ、納得がいくレベルの子供用のマスクが存在しない本当の理由は、私には分からないのですが、この「不在」そのものに強い違和感を抱いているのです。
子供への一酸化炭素対策として、先ほどの空気清浄機が少しでも役に立ってくれれば良いのですが……。
もちろん、これだけで万全だと考えるのは甘いのでしょうから、本当は どうするべきなのか、正解が見えずに途方に暮れてしまっているのです。
ただ、空気清浄機であれば、マスクのように子供が嫌がって剥がし取ってしまうのではないかといった心配は必要ありません。ないよりは「マシ」であるという、わずかな可能性に賭けて、一応の備えとして検討してみる価値はあるのかもしれませんね。
納得がいくレベルの子供用の防煙マスクが どこにも見当たらないのは、一体どうしてなのでしょうか。
マスクに限らず、それ以外の防災関連の情報や 様々な専門分野の情報においても、子供向けの具体的な情報というものは驚くほど欠落しています。
これまで数多くの防災に関する書籍や発信に触れてきましたが、そこで痛感したのは「子供・子育て世代・お年寄り・障碍者・病人」といった方々に適合する情報が、絶望的なまでに欠落しているという事実です。その実態を目の当たりにするたびに、私は形容しがたい空虚感に襲われるのです。
もちろん、そうはいっても、年齢や状況を問わず、すべての人に適合する完璧な解決策を提示することは、現実的に不可能です。対象者を限定しなければ具体的な案を提示すること自体が難しくなってしまう以上、健康な大人の人に向けた情報ばかりで埋め尽くされてしまうのは、ある種、仕方がないことです。
ですが、そうした物理的な限界があるにせよ、やはり「子供・子育て世代・お年寄り・障碍者・病人」といった方々に適合する選択肢が、あまりにも欠落しすぎているのです。
大地震という災厄は、年齢や状況を問わず、すべての人に等しく襲いかかってくるものです。それなのに、提示される解決策のほとんどが、健康な大人の人にしか通用しないものばかりなのですから、世の中は本当に人々を救う気があるのでしょうか。子供や子育て世代、お年寄りの方々の人数は、決して少なくありません。少数派が無視されていいはずがありませんが、高度な医療知識がなくとも簡単に理解できるはずの多数派の切実な問題にすら意識が及んでいないのですから、不思議でならないのですね。
結局のところ、この社会は子供や子育て世代に対して、根本的に優しくないのでしょう。経済状況が悪化し、巨大地震の脅威が間近に迫る この時代において、人を救うための防災情報ですら、子供たちを置き去りにしているのです。
こうした無情な現実を放置したまま、少子化対策として『子供を産むべきだ』と説いてしまうのは、あまりに薄情で無責任な発想だと言わざるを得ないような気がします。自らの意思で子供を産むのは個人の自由ですが、他者が それを強いることなど、到底許されるべきことではないでしょう。世の中は、あまりにも自分たちの都合だけで動いている人が多すぎるのではないかと、そんな呆れにも似た感情を抱かずにはいられませんが、それが この社会の冷徹な実態なのだとしたら、私たちは その事実を冷静に直視すべきなのかもしれません。
なぜなら、子供や子育て世代に冷淡な社会とは、つまるところ、人間や生命そのものを軽視している社会に他ならないからです。ですから、こうした物事は子供を持つ予定がない方にとっても、決して無関係な話ではないはずなんですね。弱者だけではなく、どんな立場や状況の方であっても、「対岸の火事」として放置されるリスクは、誰の身にも降りかかる可能性のあることですから……。
最後に……
かつては『地震が来たら、まず火を消せ』という教訓が、生存のための鉄則として語られてきました。しかし、現在、その行動は「自らの命を危険にさらす、避けるべき振る舞い」として定義が書き換えられています。
激しく揺れ動くなかで火元に近づけば、鍋から溢れ出した熱湯や高温の油を浴び、深刻な火傷を負うリスクが極めて高いからです。実際、過去の震災においては、この教えを忠実に守ろうとしたがゆえに、回避できたはずの大火傷を負ってしまい、苦痛を強いられた方が大勢いらっしゃいます。正義感や義務感に基づいた尊いはずの行動が、残酷にも生存を阻む大きな要因となってしまったのですね。
現代のガスコンロの多くは、感震停止などの安全装置によって自動的に消火される設計となっています。生死を分ける瞬間に優先すべきは、火を消しに向かうことではなく、火元という危険源から物理的な距離を置き、自身の身の安全を確保することなのですね。
このように、ある時代では「正解」とされていた常識が、被害データの蓄積によって「不正解」へと変貌を遂げていくことは、決して珍しいことではありません。
防災の教えは、日々変化し続けています。昨日まで正しいとされていたことが、明日には否定されてしまう。そんな流動的な世界の中で、私たちは生きているのです。
また、同じ防災士であっても、人それぞれ見解が大きく食い違ってしまっているなんてこと、決して珍しいことではありません。
だからこそ、専門家が推奨しているからといって、何も考えずに盲信してしまうのは避けてほしいのです。提示された情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭を使って、徹底的に考え抜いてみてくださいね。推考し、脳内でシミュレーションを重ね、時には確認作業や試行実験などを惜しまないこと……。
何かを購入し、備えに加える際には、それくらい慎重であってほしいのです。
生死に関わる苦しみも、大切なお金の無駄遣いも、そのどちらも避けていただきたいと、そう願っておりますから……。
以上で、本記事における情報提供を終了します。
最後まで お読みいただき、誠にありがとうございました。
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