災害時でなければ、ライフジャケットって効果的!!
しかし、災害時には様々な問題が発生して、使用が難しそう!!
拝見した以下の動画を通して、私が考えたことをいくつかまとめさせていただきます。
ライフジャケットを適切に扱うには、正しい知識が必要不可欠だと感じました。知識が全くない状態では、その機能を最大限に活かすことは難しいのかもしれません。
にもかかわらず、実際には、知識がない方が多数を占めているのが現状ではないでしょうか。さらに、災害時のような切迫した状況下では、対応すべき事柄や注意点が多岐にわたり、物理的にも時間的にも余裕がない状態に陥ってしまう可能性が高いですよね。そうした問題が幾重にも重なる状況下で、知識を要するアイテムを装着しようとすれば、失敗する可能性が高くなってしまうのではないでしょうか。
加えて、精神的にパニック状態に陥っている可能性だってあります。そのような心理状態の時に、知識が必要なアイテムを装着しようと試みると、失敗してしまう可能性が、より一層高まりそうですよね。
また、自動膨張式の製品は、空気が入って膨らむまでに時間差が生じたり、何らかの理由でうまく膨らまなかったりなど、様々なトラブルが発生する可能性があります。
こうした、ちょっとしたトラブルが発生した状態であっても、動画に映し出されたプールのように激流ではない静かな水面であったり、災害時ではない海や川であれば、そこまで深刻な事態に至らないことが多いのでしょう。
しかし、災害時のように激しい水の流れがあるとなると、状況は全く変わってきますよね。水害が発生している場所は、基本的に激しい水の流れがあります。静かな水面であるケースは少ないと思うんですよね。
このような激しい水流に巻き込まれてしまうと、身体は水流で揉みくちゃにされてしまい、最終的にライフジャケットで浮上できたとしても、その時には、すでに口や鼻から水が入り込んでおり、苦しい状態になっている可能性が高いでしょう。
失敗の可能性を考えると、個人的には、ガードベストのように使い方が簡単なものの方が安心できます。
それでは、こちらの動画をご覧ください。
この上の動画で、ご紹介しているガードベストは、本来、緩衝材によって衝撃から身体を守るための製品です。しかし、一定の浮力もあるようですから、水害時にも役立つ可能性があると考えています。もちろん、この製品の本来の目的は水害対策ではありませんから、過信は禁物です。しかしながら、状況によっては、ある程度使用できるのではないかと思っています。
ガードベストを使用する場合、特別な知識は、ほぼ必要ありません。
また、装着に手間と時間がかからない点も、大きな利点です。災害時において、装着に手間と時間がかかるアイテムは、逃げ遅れの原因になりますから、非常に問題があると感じています。
一般的なライフジャケットって、装着に手間と時間がかかりそうですよね。中には比較的スムーズに装着できるものもありますが……。
また、ライフジャケットが、瓦礫などの衝撃に弱そうなのに対して、ガードベストは、緩衝材のおかげで衝撃に強い点が良いと思いました。
災害時は、どうしても瓦礫などから激しい衝撃を受けてしまう可能性があります。衝撃を受けてしまえば、身体が損傷してしまうだけではなく、ライフジャケット自体も破損し、空気が抜けて浮力を失ってしまう可能性があるでしょう。そうなると、全く意味がなくなってしまいますよね。そのため、この衝撃への強さは、個人的に気になるポイントなのです。
ただ、問題は、衝撃から防御できる部位が、胸部と腹部に限定されてしまっているところです。非常に面積が狭いですよね。
そのため、【ネクサス ヒップガード リミテッドプロ[GU-101R]】という製品と併用して装着されると、お尻周りも保護され、わずかながら防御面積を増やすことができるでしょう。
頭や足の裏・手・膝などの防御方法については、また別の記事で書かせていただきますね……。
どんな製品にも必ずデメリットは存在するため、完璧な対策は、ほぼ不可能です。しかし、製品の組み合わせによっては、ある程度リスクを軽減させることができるでしょう。とはいえ、やはり完璧ではありませんが……。
ガードベストの他の利点は、背中側ではなく胸部の辺りに浮力を保持しているため、顔面を水面より上に浮かせることができ、呼吸の確保がしやすいところです。背中側に浮力があると呼吸ができなくなってしまうのですが、その理由は、この記事の最後のほうで、ご理解いただけると思います。(ガードベストは、呼吸が確保しやすいとはいえ、過信してしまうのは良くありませんから、ご注意くださいね。)
ちなみに、冷たい水によって体温が低下し、命を落としてしまう現象(低体温症)への対策としては、ドライスーツなどの乾燥断熱スーツが、ある程度の効果を発揮してくれるそうです。
そういったドライスーツなどと併用する場合には、【ガードジャケット】では、かなりの問題が生じてしまうそうです。動きづらくなるため、逃げ遅れてしまう可能性が高まるからなんですって。
ドライスーツなどと併用する場合には、それほど動きづらくならない【ガードベスト】のほうが良いそうですよ。
ただ、【ガードベスト】には、防御できる面積が少ないというデメリットがありますよね。そのため、先述の【ネクサス ヒップガード リミテッドプロ[GU-101R]】という製品と併用して着用されるとよいのですが、この製品は、動きやすさも意識して作られており、ドライスーツとガードベストの両方と併用したとしても、それほど大きな問題が生じないようです。
とはいえ、災害時、ドライスーツを着用する時間を確保できるのか?ってところも、重要な問題ですよね。かなり難しそうです。
低体温症の対策について知りたい方は、記事【氷が浮いた水の中 30分ぐらいで死亡 冷水の中で生存の可能性を上げる服】も、後ほどご覧ください。この記事の最下部にリンクボタンをご用意しています。
補足ですが、ガードベストは、上着の内側に着込めるほどのタイトさがあるおかげで、使い方の汎用性も生まれ、様々な面で、そこそこ使い勝手が良いのではないかと考えています。
一般的なライフジャケットやフローティングベストは、分厚くて動きづらいという話を、よく聞きます。災害時は、即座に素速く逃げなくてはいけない状況に陥りやすいため、動きを妨げるアイテムは不向きなのかもしれませんね。
すぐ下のボタンをクリックするとシマノのサイトが開かれます。
楽天やAmazonでも購入できます。何故か、楽天やAmazonのほうが安価である場合があるんですよね。
ただし、Amazonで購入する場合は、注意が必要な点があります。そのため、記事【予測が難しい方法で行われるAmazonを利用した詐欺に注意】のなかに書かれた内容や動画の内容を、ぜひご確認ください。
全身という広範囲な防御と低体温症対策を両立!
高性能でありながら残念なことに入手困難なアイテム!
津波用に開発された【救命胴衣 低体温症対策 イマーションスーツ+GPS(GNSS)機能】という製品があります。この製品の場合、単に水に浮くことができるだけではなく、瓦礫などからの衝撃や、冷水による寒さから、全身を保護することができるそうなんです。
そのため、防御面積が限られているガードベストと比較した場合、より高い安心感が得られそうですよね。(ガードベストは、津波対策用ではなく、本来、釣り用として製造されている製品です。したがって、ガードベストの性能を非難する意図は一切ございませんので、その点は、ご承知おきください。)
しかし、サイトを確認したところ、『予約購入申込受付開始 第1弾1,000着 受付中』との記載がありました。このことから、生産数が限られており、誰でも自由に購入できる状態ではないことが分かります。また、『システムをご利用になられるには、お住いの自治体において通信設備およびアプリケーションの導入が完了している必要があります。』との注意書きもありました。このことからも、やはり、一般的に誰でも購入できる状態ではないことが分かります。
こうした状況を踏まえると、この製品が広く普及し、誰でも購入できるような状態になるまでは、他の手段で代用せざるを得ないのが現状でしょう(普及計画はあるようですが、主に自治体の職員の方向けという側面があり、今後どの程度、一般に普及していくのかについては、私には分かりかねます。もちろん、対象が自治体の職員の方々だけに限定されているわけではありませんが...。)。
【津波対策用製品の防御力の限界】
ご紹介した製品は良いものだと思いますが、過信してしまうことは問題があるでしょう。
なぜなら、いくら防御力があるといっても、あらゆる破壊や衝撃から身体を完璧に守ることができるわけではないからです。
たしかに、この製品の【浮揚性(浮力)・断熱性・緩衝性能(防御力)】を高める役割を担っている発泡ポリエチレン(EPE)という素材は、一定の強度を持ち合わせていますが、津波によって生じる全ての破壊や衝撃から、生身の身体を守り切れるほどの強度があるのかと言えば、それは難しいところがあります。
津波が持つ破壊力の凄まじさを物語る事例として、あるケースを一つだけ挙げさせていただきますね。
津波の襲来から30分も経たないうちに発生してしまった津波の上の大規模な火災。大量の水が溢れる津波の上で、火災が発生するとは想像しにくいかもしれませんが、実際には大規模な火災が発生してしまいました。その原因の一つが、プロパンガスのボンベの破壊です(車両配線のショートなど、他にも複数の原因が確認されています)。津波の驚異的な破壊力によってプロパンガスのボンベが破壊され、可燃性のガスが漏れ出てしまったのです。そこへ、高速で流されてきた車両や建築物の一部が激突し、その衝撃によって生じた火花がガスに引火し、大規模な火災が発生してしまったのです。
安全性を第一に考えて頑丈に造られているはずのガスボンベをも引きちぎり、破壊をしてしまうほど、津波は驚異的な破壊力を持っています。また、かなり頑丈に造られているはずの何らかの設備ですら、ほぼ破壊し尽くすのが、自然の猛威としての津波です。
それほどの破壊力を持つ津波や、その中に流れる瓦礫などが、生身の人間の身体を直撃してしまった場合、いったいどうなるのでしょうか? 仮に、瓦礫への緩衝性能が高い優れた製品(救命胴衣など)を装着していたとしても、瓦礫などの衝撃を完璧に無効化することは不可能に近いでしょう。
これは、決して、製品の性能を非難しているわけではありません。津波の物理的な破壊力が、あまりにも過酷であることが根本的な問題なのです。製品の性能のレベルが、どの程度だ?という問題では、決してないため、仮に、今後、この製品を遥かに上回る高性能な製品が開発できたとしても、津波に対しては、ほぼ太刀打ちできないのではないだろうかと、そう考えております。
それとは別に、ガードベストも、太刀打ちできないでしょう。防御面積が狭いガードベストの場合、受ける被害の度合いが、より深刻になる可能性があると思っています。ガードベストを、津波対策用としてではなく、水害対策用として、お話させていただいたのは、こうした理由があるためです。もちろん、水害対策として使用した場合でも、完璧な安全を保証できるわけではないことを、ご理解ください。
変な話ですが、ファンタジーの世界のように、私たちが宙にでも浮かない限り、津波に完璧に対応するのは、不可能なのかもしれませんね。
【地震の規模の大きさに比例して生じる隊員数と隻数の問題】
話のテーマは変わりますが……
サイトの説明によると、有事の際は救命救助隊の方々が救助を行ってくれるそうです。であるのならば、災害時に救命救助隊員の人数が十分に足りるのか、といった点も非常に気になりますね。
もし、隊員の人数が不足している場合、救命胴衣のおかげで一時的に助かったとしても、その後の救助が間に合わず、結果として意味をなさなくなってしまう恐れがあるからです。
この製品は、GPS(GNSS)機能付きであることで、津波に流されてしまった方々の居場所が分かり、救助されやすい環境が作れるとのことです。それは、たしかに大きな利点ですよね。
ただ、南海トラフ巨大地震の場合、津波の被害に遭うであろう方の人数が多過ぎるのです。何十万人という信じられないほど多くの方が津波に流されてしまう可能性があります。
何故、それほど多くの方が津波に流されてしまう可能性があるのかと言えば、南海トラフ巨大地震の場合、津波の被害が想定されている地域の範囲が広大過ぎるうえに、津波の到達時間が数分と想定されている地域も少なくないからです。数分という短時間で 安全な場所に逃げ切ることは、ほぼ不可能です。そのため、先ほど述べたように、多くの被害者が発生してしまう可能があるのです。
そうなると当然、救助にあたる隊員も相当数必要になってしまいますが、果たして確保できるのでしょうか?
現在の1,000着という限定的な生産数から、それほど数を増やさないのであれば、救命救助隊員の人数の確保は、比較的可能なのかもしれません。しかし、それでは問題が生じますから、今後、生産数を大幅に増やしていくのであるのならば、それに伴い救命救助隊員の人数の増加も必要な条件となってくるでしょう。
もちろん、必要な人数を確保するための対策を行っている可能性はあります。おそらく、何も手を打っていないということはないはずなんです。ただ、地震の規模があまりにも大きすぎるため、その規模に見合う人数を用意するのは、現実的に不可能に近いのかもしれませんね。
また、救命救助隊員の人数確保については、他にも、いくつかの不安要素を感じています。
被災地の外からの救援の場合、想定される被災地域が広大過ぎるが故に、地理的に遠方からの救援となるケースが少なくないでしょう。被災地の外から救命救助隊員を招集し、現地へ派遣するとなると、移動に時間を要し、日をまたぐ可能性があります。
それでは非常に問題があるため、近隣または被災地内で救命救助隊員を募るほうが良いのかもしれませんが、この場合、当然のことながら隊員の方々も被災者となってしまうでしょう。その結果、隊員の方々も負傷をはじめとした様々な問題を抱え、救助活動への従事が困難になる可能性も出てきてしまいます。発災後、頼みの綱である隊員の方々の人数が減少してしまうという事態も考えられるのではないでしょうか。
このように、被災地内からの確保であれ、被災地外からの派遣であれ、いずれのケースにおいても、大きなリスクが伴うという点を認識しておく必要があると思います。
さらに、このような問題も発生する可能性があります。
ある動画の説明によると、救助活動は船で行われるようです。
津波に流された方々が、何人か同じ場所に流れ着いた場合、救助は、ある程度非効率にならずに済むのかもしれません。しかし、もし、一人一人がバラバラの場所に流れ着くような事態になれば、たった一人の救助のために、船一隻が必要になる可能性も考えられます。
そうなると、救命救助隊員の人数だけではなく、船の数も相当数必要となりますが、果たして、十分な数を確保できるのでしょうか?
GPS機能付きであることは非常に良いことなのですが、やはり、想定される地震の規模が、あまりにもデカ過ぎるために、それに見合う数(隊員数・船の隻数・生産数)を準備することは非常に難しいと思ってしまうのです。これは、生産者のせいでもなく誰のせいでもなく仕方がないことではありますが、救われる命が一部に限られてしまうのではないかということに、なんとも言葉にならない複雑な思いを感じずにはいられません。
【救助活動中に発生する問題】
もし仮に、救命救助隊の方々の人数や船の隻数を確保できたとしても、別の問題が発生する可能性があります。
実際、過去の津波火災では、瓦礫の山に道路を塞がれ、行く手を阻まれてしまったことで、消防隊員の皆様が、現場へ向かえなかったり、危険な状況のために一旦避難せざるを得なかったり、様々な問題が発生してしまいました。その結果、消火活動が困難になった事例が多々あったそうなんですね。
この事例から類推すると、消火活動に限らず、津波によって流されてしまった方々の救助活動も、難航する可能性は十分にありますよね。
また、目的地に向かう途中で遭遇する【GPS機能付き救命胴衣を装着していない他の被災者の方々】と、どう向き合っていくのかといった課題もあります。見捨てるわけにはいかないでしょう。
震災時において、救急隊員の方々は、依頼者の自宅に向かう途中で、他の被災者の方々から助けを求められてしまい、目的地に辿り着けなかったという問題を抱えてしまったそうなんですね。
これと同様の問題が発生する可能性がありますよね……。
今後、ヘリコプターを使用する予定があるのかないのか知りませんが、救助活動の際、様々な理由によって行く手を阻まれてしまうことがないように、仮にヘリコプターを使用するとしても、機数に限りがあるでしょうから、どちらにしても、救助活動に限界が生じてしまう可能性があるのではないかと思っています。
【結果的に……】
どんなに優れた性能の製品があったとしても、大地震は、その性能を台無しにしてしまうほどの過酷さを人々に押し付けてきます。このような状況に対し、私たちはどのように対処するべきなのでしょうか?
GPS機能付き救命胴衣を装着していても、状況によっては救命救助隊員に助けてもらえない可能性もなくはないでしょう。そのため、自力で、ある程度対処できる余地を残しておきたいところではあります。
というのも、津波の被害に遭われたにもかかわらず、奇跡的に生還された方々の事例を見ると、何かにしがみついていたことが、共通の要因となっているケースがほとんどであるためです。
こうしたことを考慮すると、単に楽に手足を動かすことができるかどうかだけではなく、力を振り絞って手足を動かすことができるかどうかという点も、かなり重要であると考えてしまいます。
GPS機能付き救命胴衣を装着することによって、手足の動きが妨げられてしまわないかといった点も、多少気にはなりますね。
ある動画によると、装着した状態でも、歩くことに問題はないそうです。ただ、「問題なく歩ける」ことと「全力で走れる」ことは同義ではないため、この点については、少しばかり気になってしまうのです。
全力でしがみついたり、走ることができないと決めつけているわけではありません。ただ、結果が、どのような状態になるのかが、はっきり分からないだけなのです。そのため、明確な答えが出せません。
また、必死で走って避難をする際、割れたガラスや長い釘などが足の裏に刺さっても耐えられるほどの強度が、足の裏の部位にあるのか?といった点も気になります。
足を負傷したことが原因で、避難が遅れてしまい、命を落とされてしまった方が、実際に多くいらっしゃるからです。
製品の素材から推測すると、おそらく、その強度を足の裏の部位に期待するのは難しいのではないかと思ってしまいます。
かといって、防御力の強度を高めることで重くなってしまう場合、浮力を上回る重力がかかり、身体が浮かなくなってしまう可能性があります。そのため、全身の周りを頑丈にガチガチに固めてしまうのは、問題があるのかもしれません。それならば、せめて足の裏という一部の場所だけでも強化できないだろうかと、そう考えてしまうのです。
【製品の特性とジレンマ】
断熱性のある素材で全身を覆うタイプの救命胴衣であるため、夏場であれば、熱中症になりそうなところが気がかりです。毎年、薄着の状態であっても、熱中症で命を落とす方がいらっしゃるぐらいですから、これは非常に注意が必要な問題です。
全身を覆わない、上半身周辺だけをガードするGPS機能付き救命胴衣 (リンク)も製品として存在はします。これであれば、熱中症の問題を回避できそうですが、防御できる面積が小さいため、瓦礫などの衝撃から身を守れなくなってしまう可能性が高いでしょう。
結果として、瓦礫などの衝撃から防御することを優先するために、熱中症のリスクを受け入れるか、熱中症の回避を優先するために、瓦礫の衝撃によるリスクを受け入れるか、といったジレンマが発生しそうですね。
本音を言えば、どちらも選択したくはありません。できれば、この両方のリスクを回避したいというのが、多くの方の本音ではないでしょうか。
また、津波が発生した後は、大規模な火災が発生しやすくなるため、たとえ冬場であっても、火災による熱の影響で、深刻なレベルの暑さの問題が発生する可能性があります。その場合には、装着している救命胴衣の高い断熱性が、かえって災いを引き起こす可能性もあるでしょう。
そういった理由から、暑さを回避するために全身を覆うGPS機能付き救命胴衣を脱いでしまった場合、浮力や防御力を失い、命を落としてしまう可能性が高まるでしょう。
そのため、上半身周辺だけをガードするGPS機能付き救命胴衣にすれば、浮力を確保しつつも暑さを回避できるため、マシな状況になると思いたいところなんですが、その後、沖に流されてしまったら、低体温症によって命を落としてしまう可能性があるでしょう。暑いと思ったら寒い、寒いと思ったら暑い。このように状況が一定しなくなる可能性があるのです。
何が問題かと言いますと、津波襲来後、わずか30分も経たないうちに大火災が発生してしまった実例があるうえに、津波は一度で終わらず、繰り返し発生する特性もあります。そのため、暑さや寒さの状態が頻繁に変わり、「何を優先すべきなのか」の判断が難しくなってしまうのかもしれません。
また、大火災発生中、水上と水中の寒暖差が極端に激しくなることが予想されます。暑さと寒さが同時に襲いかかるため、何にどう対応すべきか、優先順位を見失ってしまうのかもしれませんね。
そして、もしGPS機能付き救命胴衣に火が燃え移るような事態になれば、残酷な結果を招いてしまうため、防炎加工が必要となる可能性があります。
ただ、防炎加工を施したとしても、全く燃えなくなるわけではありませんから、ある程度改善されるだけで、実質的な効果は、ほぼ期待できないのかもしれません。
GPS機能付き救命胴衣の場合、使用されている、いくつかの素材から推測するに、熱には、あまり強くないでしょう。
しかも、素材のうちの一つである【発泡ポリエチレン(EPE)】という素材は、熱に溶けやすい性質を持っているんですね。
一方、ガードベストの場合、素材を見る限りでは、熱には比較的強そうです。
シマノの公式サイトには『クロロプレン1.5mm厚を使用した、衝撃緩衝材入りのガードベスト。』という記載がありますが、ここで言う【クロロプレン】とは、おそらく【クロロプレンゴム】のことだと思われます。
クロロプレンゴムには、「難燃性(燃えにくい)」や「自己消火性(自然に火が消える)」という特性があり、火が付きにくく、燃え広がりにくい素材なんですね。実際、電気設備や火気を扱う機器の部品としても採用されているほどです。
とはいえ、完全な耐火性があるわけではありませんから、過信は禁物です。もし、購入される場合は、十分注意して扱ってくださいね。
これ以外にも、GPS機能付き救命胴衣に関して、物理的な問題点が2つ、思い浮かびますが、これ以上書き進めると、内容が冗長になり、読者の皆様を疲れさせてしまう可能性があるため、この辺りで一旦区切りたいと思います。
物事には、必ず良い面と悪い面が表裏一体で存在し、メリット(利点)しかない選択肢は、ほぼ存在しないと考えた方が現実的でしょう。安易に「良い」「悪い」と単純に判断するのではなく、多角的に捉えることが大切です。
そのため、もし運良くこの製品を手に入れることができたとしても、『自分は大丈夫だ』と過信をせず、必死で安全な高所へ逃げていただきたいと、そう強く願っております。
ある救命胴衣の問題点
サイト内の説明をご覧になるとお分かりいただけるかと思いますが、この製品は「スマートトラッカー」に対応しているようですね。これをライフジャケットに装着することで、端末から着用者の現在位置を特定できる仕組みになっているそうです。GPS機能に似た、とても便利な機能ですよね。
そして、そのスマートトラッカーの防水等級は、「IP68」と記載されています。この「IP68」の右側の数字「8」が、防水性能のレベル(防水等級)を示しているんですね。
この数字を見れば、防水性能のレベルが、ある程度は把握できますが、津波対策用の製品として考える場合、この防水等級の数字だけで安全性をチェックするのは、少し注意が必要でしょう。なぜなら、防水等級のテストというのは、基本的に「常温の水道水」で行われるものだからです。
そのため、以下のリストにあるような「常温の水道水」とは成分や状態が異なる水分に対して、同じレベルの防水性能が発揮されるとは限らないのです。
- 塩分を多く含む海水
- 泥や化学物質やバクテリアなど様々な物質が含まれている川
- 入浴剤や洗剤や石鹸が溶けている水やお湯
- 酸やアルカリが含まれている液体
- 塩素濃度が高いプール
- 高温のお湯や温泉
など、様々な液体が考えられるんですね。
一例を挙げますと、海水のように塩が溶けた水は、ただの真水よりも電気製品のショートを引き起こしやすくしてしまいます。また、電気製品の防水性能・防塵性能を高めているパッキン部分を、塩水が劣化させてしまうことがあり、防水性や密閉性が失われる可能性があるんです。(他にも様々な現象が発生する可能性がありますが、文章が長くなるため、ここでは割愛させていただきますね。)
ですから、単に防水等級の数字が高いからといって、どのような状況でも安全性が保証されるわけではない……という点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントなんですね。
また、水の中の成分や状態以外の点にも、注意が必要でしょう。
それは、津波によって発生する「強い水圧」や「激しい水流」に関わる問題です。
機器の防水性能を示すIPX8(防水等級8)のテストは、水の流れがない「静水」の中で実施されます。そのため、たとえ防水等級が非常に高い機器であっても、「強い水圧」や「激しい水流」に耐えられるかどうかは、全く別の話になるのです。必ずしも耐えられるとは限らず、同じIPX8(防水等級8)の製品であったとしても、製品ごとで、それぞれ強度が異なります。
さらに、漂流物などにぶつかって衝撃が加わった場合にも、防水性が損なわれてしまう可能性が高いでしょう。
万が一ショートを起こして発熱や破裂が生じた場合、着用している人が大火傷するでは済まない事態もあるのかもしれません。
とはいえ、水害対策(津波は除く)において、IPX8(水没への耐性)といった高い防水等級を保持している電気製品を選ぶことは、それなりに有効的なんです。等級が低い(あるいは無い)製品に比べれば、電気製品の生存率が格段に高くなることでしょう。
しかしながら、IPX8という高い等級があるからといって、絶対に壊れないという保証にはつながらないのです。なぜなら、先ほどご説明した通り、「常温の水道水」とは成分や状態が異なる水分であるうえに、「強い水圧」や「激しい水流」あるいは「激しい衝撃」が加わってしまう可能性があるからなんです。
そのため、防水性能が高い電気製品であっても、防水ケース(ドライバッグ)などに入れて二重の防御をするべきでしょう。そうすることによって、泥や化学物質などの様々な物質の付着や、軽い衝撃による損傷を防ぐことができます。ただし、衝撃があまりにも強く加わった場合には、故障する可能性があることを、ご理解ください。
津波のお話に戻しますね……。
津波対策用の製品として販売されているものですから、海水に含まれる塩分の問題や、その他様々な問題への対策は、さすがにしっかり施されていると思いたいところです。
ただ、これまでの経験上、製品を開発・販売している側が、必ずしも幅広い分野の知識を網羅しているとは限らない……というのが、正直な実感としてあるのです。
もちろん、塩水などへの対策が行われていないと決めつけているわけではありません。しかし、もし本当に十分な知識がおありでしたら、Webサイト上であのような説明の仕方にはならないのではないかと、つい思ってしまうのです。対策が行われているのであれば、防水等級以外の対策についても、しっかりと記載していただきたいと、そう願ってしまうんですね。
しっかりと対策が施されていれば、何の問題もないのですが……。
大変失礼な指摘であることは重々承知しておりますが、命に関わる重要な問題であるが故に、あえてお伝えさせていただきました。どうか、お許しください。
もう一度GPS機能付き救命胴衣について触れてみます
上で散々お話しした【救命胴衣 低体温症対策 イマーションスーツ+GPS(GNSS)機能】という製品のGPS機能についてですが、塩水に関する対策を行っているのかどうかは、正直なところ分かりません。
公式サイト内で防水等級に関する情報が見当たらなかったため、『おそらく問題ないだろう』と判断してしまったのですが、対策がされていない可能性もないわけではありません。
もし、『防水性のある布で覆っているから、GPSは水から守られ問題がない』という判断で製品を製造してしまっているとしたら、非常に大きな問題があることになりますね。布は破けてしまう可能性がありますから……。
ただ、さすがに、そこまで安易な判断はしていないだろうと、期待したいところではありますが……。
まあ、お金があれば、様々な製品を大量に購入して実験を行い、問題がなかった製品を皆様に紹介するといったことをしてみたいのですが、なかなかそうもいかないのが現状です。全くお金が無いので、仕方がありませんね……。
一般的な津波対策用の救命胴衣に関する懸念点
市販されている多くの津波対策用救命胴衣は、全身を覆うのではなく、上半身周辺だけをカバーするタイプが主流なんですね。そのため、面積が小さく、瓦礫などの衝撃から、どこまで身を守れるのかという点に不安が残るんです。
また、面積が小さいことで、低体温症への対策については、ほぼ効果がないでしょう。
全身を覆うタイプの救命胴衣を見つけたのですが、それは津波用ではないため、浮力の確保と低体温症の対策に効果が限定されてしまっていました。残念ながら、瓦礫などに対する防御力は備えていないようです。
もう一点気になるのは、その形状です。分厚いうえに、手足の先の部分がもったりとしていて、動きづらそうに見えるんですよね。特に手の先は、GPS機能付き救命胴衣よりも、さらに動きにくい作りになっているように見えます。何かを掴むことができないうえに、動きづらいのは、これまでもお話ししてきた通り、避難時や救助活動において、大きな問題となるでしょう。
ドライスーツは、ある程度、低体温症の対策になりますし、マリンスポーツなどで使用されるものなので、動きやすさに関しては、さほど問題がないと思われます。
しかしながら、浮力と防御力がないのがネックです。とはいえ、浮力がある製品と防御力がある製品とを組み合わせて併用すれば、多少マシな状態を作り出せるのかもしれません。他の製品と併用したとしても、手足の部分は自由に動かせるように調節できますから、先ほど、ご説明した手の先がもったりとした製品よりは、良い選択肢なのかもしれません。
とはいえ、この方法が完璧だとは思いませんが……(完璧なものなんて、ありませんしね……。)。
ただ、防御力のあるものと併用される際、水上用の防災頭巾は、ほぼ効力がないという点を、ぜひ頭に入れておいてくださいね。陸上用の防災頭巾についても、同様に効力がありません。あれは、技術力が未熟だった戦時中に考案され使われ始めたものなのですが、効力がないと分かった現代においても、慣習でそのまま使われ続けていることが、不思議でならないのです。
また、折り畳み式のヘルメットは、強度が弱いため、万が一の際に、大きな怪我につながってしまう可能性があります(実例があります)。
ですから、ヘルメットを選ぶ際は、「軽量でありながら、十分に強度が高いもの」を選んでくださいね。
すでにお伝えしたことではありますが、頭や足の裏・手・膝などの防御方法については、別の記事に書かせていただきますね。
それから、ライフジャケットについて……。
災害時ではない水難事故において、データ上、ライフジャケットなどを装着されていた方のほうが、生存率が高かったのは事実なんですね。ですから、ライフジャケットが、決して無意味なわけではないでしょう。
ですが、そうは言っても、すべてを完璧にカバーできたわけではないんですよね。ライフジャケットを装着した状態で、以下のような問題が発生してしまっていたんです。
水中に転落した際、岩などに体を強く打ちつけてしまったケース・波の力によって岩などに叩きつけられてしまったケース・回転するような流れに巻き込まれて川底に引きずり込まれてしまったケース・落水時のショックで心臓発作が発生してしまったケース・ライフジャケットのサイズが身体に合っていなかったケース・そして、低体温症……などです。
ライフジャケットを装着していたのにもかかわらず、このような状況のなかで、命を落とされてしまった方が大勢いらっしゃるのですね。
そして、こうした現象は、災害時のような極めて厳しい状況下では、さらに増えてしまうことでしょう。
ですから、空気を入れて膨らませるタイプのものは問題外ですし、防御力があり、様々な問題が軽減できる性能が必要不可欠なのだと頭に入れておいてくださいね。
けっこうジレンマが発生しますけれどね……。
浮力付きリュックサックの危険性
浮力がついたリュックサック型の製品も存在しますが、これは論理的に考えてアウトだと判断いたしました。リュックサックは背中側に背負うものです。背中側が浮力によって上に引っ張られる形になると、顔は下向きになり、水中に沈んでしまいます。
流れのない静かな水の中であれば、自力で体勢を整えることはできるのかもしれませんが、激しい水流がある場合、人間の力なんて無力です。その結果、顔が水中に沈んだままの状態になり、呼吸ができなくなってしまうでしょう。
このような懸念から調べてみたところ、やはり、そうなるらしいんですよ。
自衛隊の方々は、流れのない静かな水の中で浮く必要がある場合(災害時ではない)、リュックサックをお腹側にかけるそうです。背中側に背負うと、先程、私が、説明したような危険な状態になってしまうのだとか。
では、『お腹側にかければ良い』という話にもなりそうですが、災害時は避難のために素速く走る必要があり、お腹側にかけていると邪魔になってしまいます。
また、上から物が落下してくる可能性など、様々な事態が想定され、リュックサックを背中側やお腹側に掛け直している間に時間を浪費して、逃げ遅れてしまう可能性があるでしょう。
ですから、最初から、そのような手間をかけずに済むアイテムのほうが、私は望ましいと考えています。
なぜ、ある企業が浮力付きのリュックサックを開発してしまったのか、不思議に思えてなりません。論理的に考えれば、かえってマイナスになることが分かりそうなものですが……。
実際に使用実験などは行われなかったのでしょうか?
ただ、胸や腰部にベルトが付いているリュックサックの中には、ベルト部分に浮力体があり、その浮力によって顔が水中で下向きにならないように設計されている製品も存在します。こうしたタイプの製品であれば、問題なく使用できるのかもしれませんが、リュックサックを背負っている時以外は、浮力が得られない状態になってしまいますから、身体に沿う形で常に装着できるアイテムも併せて用意しておいたほうが良いのではないかと思われます。
ベルト付きリュックサックとガードベストなどを同時に併用するという方法も、有効なのかもしれませんね。これらを二つ組み合わせることで、二重に浮力が働くことになりますし、同時に荷物が水の中に沈んでしまうという事態も防げるのかもしれません。
やはり、ご自身の身体はもちろん、大切な荷物も両方守りたいというのが、多くの方の願いではないでしょうか。
それでは、この辺りで、今回の記事を終わりにさせていただきます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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