震災時、パニック状態に陥った方々は、1+1などの一桁の計算すらできなくなってしまったり、目の前のドアの開け方(引くのか押すのか)すら分からなくなってしまったりするなど、様々な問題が発生してしまうそうなんです。
1+1の計算ができなくなるなんて、本当に驚きですよね。しかし、それが極限状態に置かれた人間の脳内で引き起こる物理的なバグなんだそうですよ。
このバグは、心が弱いから生じてしまうのではなく、人間が命の危険を感じるほどの恐怖に襲われた場合、脳内で生き残るための本能(逃げるか戦うか)に集中させるために論理的な思考が強制的にカットされてしまうという切り替えが発生してしまうからなんだそうです。
ですから、こういった状態を経験された方は、ご自身を責めないようにしていただきたいと、そう願っております。非常に自然な変化なんだそうですよ。
とはいえ、そんな状態で、例えば、大地震発生後の火災時、消火器の安全ピンを抜き、ホースを構え、レバーを握り、消火剤の小さな出口を燃焼物に正確に向けて放射するであったり、津波襲来時、救命胴衣の位置を微調整するなど、etc……、こういった様々な「多段階のプロセス」が、物理的に実行不可能になる可能性を直視すべきだと思うんです。つまり、防災グッズは、可能であれば、「知識・論理的思考能力・複雑な工程」などを必要とせずに、直感的に扱える物に限定すべきなんですね。「1+1すらできない自分」を想像すると怖くなりますが、その「無力な自分」をあらかじめ計算に入れて防災グッズを備えておくことで、極限状態下でも、極わずかな冷静さを保てる可能性が生まれるのではないかと思うんです。
また、強い恐怖を感じると、視界がトンネル化して極端に狭くなってしまうトンネル・ビジョンという現象が起きるのです。このとき、認知の範囲は極端に狭くなります。
こういったとき、例えば、大地震発生後の火災時、目の前の炎しか見えなくなり、すぐ横にある出口や、足元の瓦礫やガラスの破片、さらには消火器の操作説明ラベルすら目に入らなくなってしまう可能性があるのです。
ですから、やはり、先程も言ったように、防災グッズは「知識・論理的思考能力・複雑な工程」などを必要とせず、直感的に扱える物が良いでしょう。