火災の発生を防ぐ方法や 消火に関連する注意点については、別の記事で詳しくお伝えしますね。
本記事で扱うのは、火災による死因の第1位を占めている「煙に含まれる有毒ガス」の冷徹な現実についてです。
炎が回り込むよりも早く、確実に命を奪い去っていく、この目に見えない脅威から、いかにして生き延びるのか。そのための具体的な対策を整理しました。
多くの方は、火災=焼け死ぬというイメージを持っていますが、それでは物理的な実態を正確に捉えることができていません。
実際の建物火災による死者の「約8割」は、「煙に含まれる有毒ガス」によって体内の酸素の運搬を阻害され、窒息したことが原因で亡くなっているのです。炎が回るよりも遥かに早く、発火から わずか数分で、命を奪うほど高濃度の有毒ガスが充満してしまうのですね。なかには、一呼吸だけで意識を失ってしまうこともあれば、そうではなくとも、身体が動かなくなってしまったり、思考が混濁して出口を見つけられなくなってしまったりすることによって、開かないはずの死への扉が開いてしまうのです。
残酷な現実を言えば、炎に焼かれる前に、すでに呼吸という生存機能が停止しており、その後に焼かれることになってしまうのですね。
この「約8割」という数字は平常時のデータですが、震災時においても、この力学が変わることはないでしょう。
むしろ、建物のヒビ割れなどを通じて煙が回る速度は上がり、一方で倒壊物などの障害によって避難は遅れます。
こうした環境の悪化が重なり合う震災時だからこそ、この目に見えない暗殺者である「有毒ガス」の脅威は、平常時以上に増大するのだと、そう考えるべきなのではないでしょうか。
ですから、煙を吸い込まないための対策は、生存のための絶対的な条件なのですが……。
しかし、不可解なことに、多くの防災の専門家の方々が、物理的に極めてリスクの高い手法を推奨しています。それは『火災時は防煙フード(あるいはゴミ用のポリ袋)を被って逃げろ』という指導なんですね。
そうした指導内容が、十分な検証もなされないままに広まってしまっている、この世の中の構造に対して、私は拭い去れない危惧を抱いています。
私が抱くこの危惧は、個人の感情的な疑念なのではありません。
有志の方による【防煙フード】の多角的な実証テストは、その構造的な欠陥を明確に示しています。もちろん、あらゆる状況を一括りにはできませんが、実証テストで示された結果は、私が かねてより懸念していたリスクが、やはり無視できない現実なのだということを裏付けているのです。